2019年1月スタート毎週日曜よる9時

グッドジャッジ

vol.9弁護士の就職事情… 杏子と朝飛,あなたならどちらを選ぶ?

グッドワイフも残すところ最終話だけになりました。壮一郎の事件は無事に解決しましたが,まさか… 衝撃の展開でしたね。どこまでも安心させてくれないドラマです (笑)。
さて,第9話では,回想で杏子の面接のシーンが出てきましたね。今回のコラムではあまり知られていない弁護士の就職事情についてご紹介しましょう。

①就活のタイミングは?

まず晴れて司法試験に合格しても,さあ明日から弁護士だ,というわけにはいきません。弁護士になるためには,次に 「司法修習生」 と呼ばれる研修生となり,1年間の司法修習を納めなければなりません。裁判所検察庁法律事務所をインターンのような形で回り,勉強しながら実務を覚えていくわけです (杏子はこの司法修習のときの成績がトップでしたね)。そして,弁護士志望の人は,この司法修習期間 (早い人は司法修習が始まる少し前から) が最初の就活のタイミングになります。修習中は 「あの事務所が最近募集をはじめたらしい」,「あの事務所はボスが厳しいんだって」 といった情報が日々飛び交うわけですね。

②どうやって事務所を選ぶ (探す) の?

法律事務所と言っても,弁護士を大勢抱える大きな事務所,小規模な事務所,都会の事務所,地方の事務所,企業がお客さんの事務所,個人がお客さんの事務所,刑事が強い事務所,離婚が強い事務所… 日本全国そのバリエーションや組合せは無限にあります。その中から,自分が行きたい規模や分野の事務所を探すのですが,探し方は普通の就活と変わらず,今はインターネットが中心です。少し特殊なのは,全国の弁護士会を束ねる日本弁護士連合会 (通称:日弁連) の HP に全国の事務所や会社の弁護士募集情報が沢山載っているんです。この利用率はかなり高く,杏子も朝飛も今回の再就職の際は間違いなく見ているはずです (笑)。
あとは,根強く残っている方法としては,やはり 「人づて」 ですね。
何と言っても弁護士は客商売ですし,特に少人数の事務所であれば,採用する弁護士にすぐ自分自身の大切なお客さんの仕事を担当させることもあります。なので能力はもちろん,できれば信用性やコミュニケーション能力がある人を採用したい。ところが,大勢と面接するような採用スタイルでは,そういったところは中々見えづらいですよね。一方,法律事務所は星の数ほどありますので,中には外見と中身のギャップが大きい事務所もあります。就職・転職を考えている弁護士からすると,入ってから全然想像と違う!なんてことはやはり避けたいですよね。そんな中,事務所・弁護士双方にとって,自分が信頼している 「〇〇先生の紹介」 というのは何よりの安心材料になるわけです。弁護士業界はまだまだ狭く,弁護士同士,大体どこかで共通項があったりします。なので,こういった昔からの 「紹介スタイル」 が生き残っているんですね。杏子もいわば多田の紹介で神山多田法律事務所に来ることになったわけですが,紹介であんな立派な事務所に行けるなんて羨ましい限りです (笑)。

③面接ってどんな感じなの?

私の個人的な考えも入っていますが,弁護士の仕事は簡単に言えば 「他人を説得する仕事」 です。自分を選ぶようにお客さんを説得する,裁判で勝つように裁判官を説得する,和解交渉で相手方を説得する…,とにかく,色んな場面でプレゼンテーション能力が問われます。また,そうしたプレゼンテーションの完成度を上げるためには,依頼者や事件の関係者から,必要な情報をより早く,より正確に入手しなければなりません。そのために必要なのは当然コミュニケーション能力ですよね。なので,面接時には,いわゆる勉強的な能力のチェックよりも,人柄を含め,気持ちよくコミュニケーションが取れるか,そして,自分の考えをしっかりと誤解なく相手に伝えられるか,といったところを重視する事務所も多いです。

さてさて,こうした点を重視して見た場合,あなたなら杏子と朝飛,どちらを採用しますか?

弁護士:國松 崇

元 TBS 社員弁護士。現在は東京リベルテ法律事務所に所属し,主にエンターテインメント分野の取引法務や訴訟対応等を中心に,多くの企業・個人に対し,幅広くリーガルサービスを提供している。また,刑事弁護人としての活動も引き続き精力的に行っている。『 99.9-刑事専門弁護士- シリーズ 』 など,多くの TBS ドラマにおいて,脚本作りや法廷シーンの演出など全体の監修を担当。

このページをシェアする

このページのトップへ