2019年1月スタート毎週日曜よる9時

グッドジャッジ

vol.6帰ってきた壮一郎… そういえば「保釈」ってどういう制度なの?

グッドワイフ第6話、今作のもう一つの物語が大きな転換期を迎えました。壮一郎がついに身柄を解放されましたね。これは 「保釈」 という制度を利用したからです。
皆さんもおそらくよく耳にするであろう、この 「保釈」 という制度ですが、「捕まっても保釈されればすぐ出てこられる」「お金を払えば誰でも出れる」「お金を持ってない人にとっては不公平でしょ」 なんていう声を時おり耳にします。
知っているようで知らない 保釈という制度 について,ここで正確なところをおさらいしてみましょう。

① 保釈が請求できるのは 「起訴されたあと」 だけ

刑事事件は大きく起訴前起訴後にステージが分かれています。起訴前は,警察や検察が捜査権をフルに活用して,被疑者が本当に罪を犯したのかどうか調査します。いわば 「捜査ステージ」 ですね。そして,検察が 「やはり有罪である」 という結論に至ったとき,検察は被疑者を起訴します。刑事事件は捜査段階から,裁判所を中心とした 「裁判ステージ」 に移行するということです (被疑者の呼び方もここで 「被告人」 に変わります)。保釈は,この 「裁判ステージ」,つまり検察官による起訴後にようやく請求できるようになるんです。そして,保釈を求める先は,その審査を含め,警察や検察ではなく,起訴により,被告人の身柄を警察・検察から引き継いだ裁判所ということになります。

② 保釈は必ず認められるものではない

保釈は被告人であれば誰でも請求することができますが,保釈の請求が行われると,裁判所には,検察に対し,保釈を認めるのが相当かどうかの意見を聴くことが法律で義務付けられています (検察への 「求意見 (きゅういけん)」 といいます)。
今作でも,壮一郎の保釈の請求に対し,脇坂が 「オレが直々に反対の意見書を出してやったぞ」 と凄むシーンがありましたが,これが,裁判所からの求意見に対する検察の意見 (反対) ということになります。検察官の意見はあくまでも参考であり,法的には裁判所がこれに従う必要はありませんが,検察官の意見は実務上かなりの影響力を持っていると言われています。こうした流れを経て,保釈について裁判所がネガティブな印象を持ってしまった場合,保釈は当然却下されることになります。

③ 保釈を利用するためには 「保釈金」 を裁判所に納める必要がある

何とか頑張ってそういった手続きをくぐり抜け,裁判所が保釈を認めてくれたとしても,保釈にはまだ壁が残っています。それが 「保釈金」 と呼ばれるお金です。保釈金を裁判所に納めなければ,実際に解放されることはないんですね。保釈金とは,「被告人が裁判に出ないで逃げたりしないために,いわば 『人質』 として裁判所に預けておくお金」。身柄を解放してもらうための対価として支払うものではありません。裁判が無事に終わったら,結果がどうあれ,保釈金は全額返還されることになります。逆に言えば,逃げたら没収されるということですね。こういった性格から,保釈金の金額は,その人にとって 「逃げたら大損する!」 と感じる金額に,個別に設定されることになります。裕福な人と,そうでない人,あるいは罪が重い人とそうでない人では,そう感じる金額に差があるからです。実務では,この保釈金を集めるのが結構大変なんですよね

さて,壮一郎はこうした手続きを経た上,保釈金を納め,ようやく保釈されたということです。保釈金は杏子や壮一郎の母親がきっと苦労して準備したんでしょう !?

弁護士:國松 崇

元 TBS 社員弁護士。現在は東京リベルテ法律事務所に所属し,主にエンターテインメント分野の取引法務や訴訟対応等を中心に,多くの企業・個人に対し,幅広くリーガルサービスを提供している。また,刑事弁護人としての活動も引き続き精力的に行っている。『 99.9-刑事専門弁護士- シリーズ 』 など,多くの TBS ドラマにおいて,脚本作りや法廷シーンの演出など全体の監修を担当。

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