コンテンツ⑤

Tech Design X

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TBSグループ初のイノベーション施設「Tech Design X(クロス)」。デザインセンターとして企画初期から携わり、施設の空間デザイン、コンセプト設計を担当。「イノベーターたちの宇宙船」というデザインコンセプトをもとに、コンセプトムービーの制作や、オープニングイベントの演出やビジュアル周りのディレクションなどさまざまな領域にわたりデザイナーとしてチームに貢献しました。

空間デザイン

コミュニケーションが生まれる場所

「Tech Design X」はテクノロジーとデザインが出会いイノベーションが生まれる場所をめざしていたので、できるだけコミュニケーションが生まれやすいよう、壁をなくして部屋の中央にミーティングスペースを作りました。普通、会議室といえば壁で囲われているものを想像すると思いますが、壁をなくすことで通りかかった人が覗けるし、自然と誰かの作業が見えたり聞こえたりするので、和気藹々と作業でき会話が生まれやすい空間になったかと思います。

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「壁」を取り払った開放的な空間

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電飾を効果的に使用することでデザインコンセプトにもある「宇宙船」的な雰囲気も演出できる

イノベーションの木

Tech Design Xでは、中心の柱に大きな「木」を配置しています。この施設のシンボルともいえるこの木は「イノベーションの木」と呼ばれています。ここに来る人たちがそれぞれアイデアや意見、思想、夢などの種を持ってきて、その人たちの種がこの木の周りに植えられて育っていくという願いを込めています。

イノベーションの木があるスペースは「常夏の窓際ベイベー」というフルネームで、略して「常夏」と呼んでいます。窓際で光も入るので、リゾート気分を味わえます。他にも3Dプリンターや工具などがおいてある部屋は「アナグマ」、機材室は「アジト」などユニークな名前がついていて、チームメンバーとのラフなコミュニケーションの中でうまれたちょっとした遊び心が結果的に愛されてリラックスできる施設になることにつながったと思っております。

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イノベーションの木

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左からアナグマ(工具室)、アジト(機材室)

コンセプトムービー

トーンの決定

Tech Design Xの誕生を広く伝えるため、「どんな想いや哲学のもとに作られた施設なのか」を表現する「コンセプトムービー」を作ることになりました。

今回は「テクノロジーとデザインが出会い、対話の中でイノベーションが生まれる」というメッセージが肝になっており、当初は「出会う」「対話」などを具象的に「アニメ的な物語」として動画にするコンテ案なども出ていましたが、表現したいトーンや尺感などもあわせて議論する中で抽象的なモチーフでミニマルに思想を表現する方向に軌道修正し、結果的にこれが全体的なクオリティを安定させることにつながりました。

こういった動画作成においては、「表現したいものやメッセージを整理」し、「トーンを決定し、動画の構成を組む」というところまでが、完成した動画の最終的なクオリティを左右する最も重要な行程といっても過言ではないと思います。

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まずはアイデアを膨らまし、議論の中で整理し、収束させていく

ディレクション

構成やトーンが決定したあとは自分一人で黙々とデザインしてく…のではなく、CGデザイナーとサウンドデザイナー、それぞれのプロにお声がけをし、トーンや構成のオリエンをしてスピーディかつ質の高い動画の仕上がりを目指しました。
動画制作は特に構成する要素や作業の絶対量が多いので、トーンや構成を自分の頭だけで完結させずに言葉や資料として具現化して、適切に伝え、分業で制作していくことが重要だと思います。

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サウンド、CGの発注段階での資料

映像の完成と展開

完成した映像がこちら。

全体に「テクノロジー」「新進気鋭」を感じる黒背景に光を感じる文字をモチーフで展開してスピーディーでクールに仕上げつつも、「デザイン」の要素のためにあえて手書き的なスパイスを加えたり、プリズムやシャボン玉のようなモチーフでカラフルな要素が徐々に登場するように展開させることで、テクノロジーとデザインの出会いとイノベーションの多様性を表現しました。

このムービーはPRだけでなく、webサイトでもメインビジュアルとして使われたほか、フォントや文字の出現効果なども動画のトーンを踏襲したものになったり、施設内のモニターでもフタとして使用されたり、コンセプト表現のKV(キー・ビジュアル)としても機能し、結果的にTech Design Xのクリエイティブの統一感に貢献するものになったことも、デザイナーとしてはとても嬉しかったです。

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オープニングイベント

コンセプト設計

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本イベントでは、「Tech Design X」の空間の魅力、そして、「クリエイター同士が垣根を“越えて” 様々な想いが“交差する”」というコンセプトを、来場者の方々に感じて頂き、Tech Design Xで挑戦したいことについて考える“きっかけ”になるような体験づくりを企画しました。そこで、「イノベーションの木」から発想し、個人の専門性や興味によって異なる木が育つ演出を行うことで皆さんとともにイノベーションを起こす施設であるTech Design Xの存在意義を表現する、というプランを提案しました。

体験設計

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来場者の方は、「タネ」をイメージしたデバイスを持って空間を回遊し、タネを指定の台に置くとLEDに個人の属性データに応じた映像が映し出されます。技術や照明のチームとイメージを共有するため、絵コンテを作って全体のイメージを共有しながらプロジェクトを進めていきました。

情報に基づくグラフィックデザイン

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個人の属性データを体験で用いるLEDなどにグラフィックとして反映させるため、事前アンケートの回答から得た興味や専門性から4つの単語を決定し、単語の意味空間と色空間を対応させることで導いた4つの色からグラデーションを作成するという手法を用いました。さらに、グラデーションに対して画像生成AIを用いることで、よりリッチなグラフィックを作成しお土産としてのステッカーを作成しました。