制作発表会見での原作者・天童荒太さんのメッセージ

人生には、つらいことや悲しいことが多くあるので、せめてドラマや小説くらい明るく楽しいものを見たい、読みたい、というのは普通の考え方です。ただ、もしこの世界で、ドラマや小説が明るく前向きのものしかなくなったら、それもどうなのかな、と思います。
人がつらい現実にぶつかり、悲しみの底に沈んだとき……きみ一人じゃないよ、つらかったら立ち止まっていいし、その場にうずくまっていいし、逃げたっていい、そしていつかまた歩き出せそうになったら、ゆっくり足を踏み出してみたらどうかな……と、伝える表現家でありたいと、私は願ってきました。
そのためには、つらい、重い、もう生きていたくない、と思うような現実もしっかり見つめる必要があります。でなければ、地に足のついた希望は語れない。悲しみの底にいる人に、語りかける言葉は生まれない、と思ってきました。
ドラマ『家族狩り』のキャスト・スタッフも、これまでならお茶の間に距離を置かれかねないタイトルと内容だけれども、ここで語られる真実、地に足のついた本物の希望、つらさを見据えるからこそ生まれる凜とした未来は、きっと視聴者の心の深いところに届くし、実は求められているし、この悲しみ多い世界に必要なドラマになり得ると信じて、制作に取り組んでこられました。
私は、もうただの原作者ではありません。キャスト・スタッフの情熱に触発されて、台本のかなり深いところに関わらせていただくようになりました。だからこそ自信を持って申します。現在のテレビドラマや映画で、というだけでなく、これまでのドラマや映画においても、ここまで踏み込んで、家族の問題、社会の中における家族の現実、人間の孤独と、人間が共に生きていくことの可能性を、切実に、きれいごとでなく、深く、ダイナミックに、エンタテインメント性まで含めて、表現し得た作品はありません。さらに、そうした悲しみのかなたでキラキラと光る、ささやかだけれど、決して曇ることのないまばゆい希望を描いた作品を、私は知りません。
ハードなサスペンスだけではない、笑いもあります。ホームドラマの要素もある。そして、その先に現れる最後のテーマは、たぶん世界で初めて語られる言葉です。20年前に初めて『家族狩り』という作品を発表して以来、20年間考えつづけてきた、新しい時代に向けての、家族を変える、つまりは世界を根本から変え得るテーマが、最終的に浮かび上がってきます。
それを口にするのは、松雪さん、伊藤さん、遠藤さんですが、ここにいらっしゃるキャストの皆さん、また今日は来られなかった キャストの方々、一人一人が具体的にそれはどういうことか、ドラマで見せてくださいます。キャストの方々は、とても勇気に満ち、深いところにもぐって真珠のような人間の真実をつかんだ上で、演じておられます。お一人お一人が、かけがえのない方たちです。誰一人欠けても、ドラマが成立しないし、事件も解決しないし、いま申したテーマが生きてくることもない。
私は25年ほど前に映画の世界にいたので申しますが、スタッフたち、たとえば演出、撮影、美術、音響効果、照明、制作部、彼らの仕事のレベルは非常に高いです。その技術力、作品に対する咀嚼力は、ハリウッドに決して引けをとりません。
音楽も素晴らしい。主題歌を担当されたandropさんの曲は、繊細に、深く、人間の悲しみに透き通っていきながら、最後につややかなまばゆい希望へ飛翔していく……まさに、この作品のテーマとつながっています。
このドラマはきっとテレビの歴史に名を刻むと確信しています。のちのちまで語られることになるでしょう。
ドラマ『家族狩り』の原作者であることは私の誇りです。また、チーム『家族狩り』の一員として迎えてくださったことを感謝しています。最後に、この作品のキャスト・スタッフに心からの敬意と拍手を贈りたいと思います。ありがとうございました。

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