亜熱帯の強い日差しを受けて鮮やかな赤瓦が風景に映える。沖縄といえば、この赤瓦が印象的だ。赤瓦を描く代表的な画家の一人、大嶺政寛(おおみねせいかん)。古くからの沖縄の発音で「セイクァン」と呼ばれ、多くの人たちに愛された。しかし赤瓦には、政寛の戦後の苦悩が隠されていた。 県立第一高等女学校、戦後「ひめゆり学徒隊」として戦場での悲惨な最期が語り継がれた女子学生たち。彼女たちを引率して戦場に向かうはずだった美術教師、政寛だったが運命のいたずらでバラバラになってしまう。戦場を逃げまどううちに米軍の捕虜となった政寛は、戦後になって「ひめゆり学徒隊」の最期を知る。 「自分だけが生き残ってすまないという思い」から、教師としての責任に苦しんだ政寛は、戦後教職にはつかずに画家として生きていく決心をした。しかし周囲にそんな思いを語ることはほとんどなかった。そして戦後は戦争で失った風景、沖縄の赤瓦を描くことに情熱を傾けた。 失った沖縄の風景、大切な命…政寛が赤瓦に込めた苦悩、沖縄への思い。証言と作品、そして今、政寛に向かい合う人たちの思いで繋いでいく。
制作:琉球放送
ディレクター:土江真樹子 |
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