報道の魂
ホウタマ日記
2011年06月11日 #85「記者たちの眼差し」編集後記 (岩城浩幸)
「放送に至っていないものがたくさんある」、「現場に行った記者たちの思いが十分に伝えきれていない」、「歴史を塗り替えた災害は、放送史を塗り替える長時間の放送でも伝えきれない」…。JNN系列各局報道部のデスクや部長から、そんな声が聞こえるようになったのは、震災発生から1ヶ月をすぎた頃だったろうか。「それらを集めて放送しよう」という声となってまとまるまでに、それから長い時間はかからなかったと記憶している。

「報道の魂」、「JNNルポルタージュ」の時間がその放送枠に指名されたのにはわけがある。この欄に記したように、この番組は関東ローカルの放送だが、JNN全局に、放送素材として配信されている。各局の放送時間は一定ではないが、結果として、全国で放送されることになる。

今回の場合で言えば、被災地の局とそれ以外の局では、ライフライン情報や震災関連情報など放送のラインナップが異なる。だから、各局の事情にあわせてこのオムニバス形式全体をひとつの番組として放送したり、1本ずつのリポートとして放送したり、機動的に運用できる。

番組の趣意書が回ってまもなく、JNN各局の記者から多くの手が挙がった。その結果が、8分の記者リポート24本、3時間半という枠組みになった。この番組の骨格は、記者たちが「1人称」で報告することだが、言ってみれば番組の成り立ち自体も、JNN各局の仲間たちが「1人称」で発案し、手を挙げたことによるのだ。

放送後に、ある新聞社からの取材を受けた中で、こんな指摘をされた。「あんな深夜から未明に3時間半の放送をして誰が見るというのか」。これに対しては、こう答えた。「そうした時間に多くの人に見ていただき、多くの反響をいただいている」、「全国各地では、深夜にかぎらず夕方や昼、長さも夫々の事情にあわせて放送される」。

夫々の記者リポートは今後、ある局では3時間半のままで、ある局では8分を3本まとまた30分枠で、ある局では毎日1本ずつ計24日間で放送されることになる。また、CSの「TBSニュースバード」では再放送を予定しているので、JNN系列各地の放送局とTBSのホームページなどで確認していただければ幸いである。

多くの記者の参加があった中で、今回、収容できなかったものが3本あった。そして、今も手を挙げてくれる記者がいる。今回の番組のラストシーンでフリーカメラマンの語る言葉が胸に響く。「報道されなくなったら終わりだ」。記者たちもそれを実感している。そして、こうした現場の声に突き動かされて、今も多くの記者たちが現場で取材を続けている。彼らの活動が続く限り、今回のような番組を続けていきたいと考えている。

TBS報道局主席解説委員 岩城浩幸
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