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はじめに

開催趣旨

グエルチーノ (1591-1666年) はイタリア・バロック美術を代表する画家として知られます。カラヴァッジョやカラッチ一族によって幕が開けられたバロック美術を発展させました。一方、彼はアカデミックな画法の基礎を築いた一人でもあり、かつてはイタリア美術史における最も著名な画家に数えられました。19世紀半ば、美術が新たな価値観を表現し始めると、否定され忘れられてしまいましたが、20世紀半ば以降、再評価の試みが続けられており、特に近年ではイタリアを中心に、大きな展覧会がいくつも開催されています。国立西洋美術館もグエルチーノの油彩画を1点所蔵していますが、今回はこの知られざる画家の全貌を、約40点の油彩画によってお見せします。わが国初のグエルチーノ展です。

出品作品の多くはチェント市立絵画館からお借りします。実はチェントは2012年5月に地震に襲われ、大きな被害を受けました。絵画館はいまもって閉館したままで、復旧のめども立っていません。本展は震災復興事業でもあり、収益の一部は絵画館の復興に充てられます。

メッセージ

本展は二つの偶然が重なって開催されます。最初の偶然は2012年にグエルチーノの町チェントを襲った地震です。大きな被害を被った絵画館の再建にむけ、国立西洋美術館と TBS が協力を申し出てくださったのです。もう一つの偶然は、国立西洋美術館がグエルチーノの傑作《ゴリアテの首を持つダヴィデ》を所蔵していたことです。本展は美術館同士の崇高な連帯を示すとともに、チェントやボローニャ、その他イタリア各地から借用する作品によって、東京のダヴィデを多角的に見直すきっかけを提供することでしょう。本展を通じて、イタリアと日本の相互理解が進むことを期待しています。

ルイージ・フィカッチ
ボローニャ文化財・美術館特別監督局長官

チェント市の震災について

フェッラーラとボローニャの中間の町チェントの市立絵画館には、世界で最も充実したグエルチーノの絵画コレクションがあります。この町で画家が生まれ、活動したからです。2012年5月、エミリア地方を襲った大地震の後、美術館の作品は消防士たちの手によって運び出されました。被災した絵画は収蔵庫で眠るかわりに、地震のシンボルとして他の美術館に貸し出されることになりました。これまでボルツァーノ、ワルシャワ、ザグレブで展覧会を行いましたが、今回はより規模の大きな展覧会を東京で開催します。日本ではいまだ知られていない、しかしバロックのヨーロッパでは最も重要な画家であったグエルチーノの全貌を知っていただく、またとない機会となるでしょう。

ファウスト・ゴッズィ
チェント市立絵画館館長


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