花や植物をこよなく愛する
イギリスの人たち
大都市ロンドンのムーブメントとは？

僕にとって今回の取材は久しぶりのヨーロッパで、ロンドンに至っては11歳の時以来ですから、ずいぶん時が経っています（笑）。以前訪れた時はヨーロッパの大都市という感じでしたが、今回の印象はグローバルな大都市。訪れる観光客も、お店などもグローバルだと感じました。ロンドンに到着した時はそんなふうに感じていたのですが、花や植物、庭についてさまざまな方たちにお話を伺っていくと、イギリスらしいエピソードがたくさん出てきて興味深かったです。

日曜に開催されるフラワーマーケットに行った時には、その盛況ぶりに驚きました。毎週開催されているのですが、たくさんの人が花や植物を買い求めていました。イギリスでは多くの人が花や緑のある生活を愛するだけでなく、育てて手入れをしていくことにも喜びを感じているのだと思います。イギリスの文化ですね。そしてなぜイギリスでは草花やガーデニングを愛する文化が根付いたのかと考えると、世界で初めて産業革命が起こり、世界に先駆けて環境問題に関心を持った国ということと無関係ではないように思います。イギリスの人たちにとって、花や植物は喜びや癒しであると同時に意思表示のようにも感じました。

僕がそんな想いに至ったひとつは、ガーデニングの世界で起こっているムーブメントに関わる方たちの取材でした。みなさんそれぞれ何とかこの状況を変えたい、より良くしたいという想いがあって活動されているのですが、それをユニークな手法でしているのがイギリスらしいと思いました。レジスタントにも、ユーモアや優しさを加えることで、多くの人に共感を得られムーブメントになっていく。花や植物は人の心を和らげてくれますが、イギリスの人たちはそれを個人の楽しみだけに留めず、出会いや交流のきっかけに繋げていると感じました。ですからイギリスにはガーデニングによるさまざまな福祉活動も生まれてくるのでしょうね。

英国王室が生んだ
250年の歴史を持つ世界最大の植物園
世界遺産キューガーデンへ！

キューガーデンでは、この植物園の歴史、世界中から植物を採取してきたプラントハンターについて、また未来に向けたプロジェクトも取材してきました。まずは広大な敷地に驚きましたが、250年も前から世界中のありとあらゆる植物を集めてきた好奇心が凄いと思いました。ガーデンの始まりは、国の利益や上流階級の嗜好のためという要素が強かったと思いますが、好奇心なくしてここまでの収集には至らなかったと思います。実際に各国で植物を採取してきたプラントハンターだけでなく、好奇心の強い国民性が伺えます。また世界最大にして250年もの歴史をもつ植物園ですから、さまざまな植物に歴史的エピソードがあって、それがとても面白かったです。

またキューガーデンの未来へ向けたプロジェクトでは、世界に貢献するガーデンの活動を知ることができました。歴史から謙虚に学び、時代に寄り添いシフトチェンジをしながら今のキューガーデンがあると実感しました。かつて王室の庭園だった頃のキューガーデンはイギリス繁栄の象徴でもあったと思いますが、今後は違った意味でのイギリスの誇りになっていくのだと思います。

目指せ！
‘もったいない’の逆輸入！？

イギリスのガーデニングで起こっているムーブメントは、どれも興味深かったですが、不要になった花を集めてブーケを作りそれを無償で贈るアーシュラさんの活動が印象的でした。まさに‘もったいない’の精神です。当たり前のように廃棄されているというのは、どんな業界でも大なり小なりあると思いますが、その当たり前を見つめ直して、価値あるものにする。発想を転換し、アイデアと技術によって廃棄をなくしていくのは、今の時代に合った最先端のアクションだと思います。日本の造園や園芸の業界でも、そのようなムーブメントを起こしていけたらと感じました。