インタビュー

ミムラさん:春子 役

ミムラさん:春子 役

❤ 中原アヤ先生の作品がお好きだと伺いましたが「ダメ恋」はお読みでしたか?

読めるときには読んで、という感じだったのですがこのお話をいただいて改めて最新刊まで読んだら「おお!」ということになっていて…(笑)
私のポリシーとして、自分の役の目線だけで読むと偏ってしまうので必ず一回は何も考えずに読みます。それから「じゃあミチコの目線ではどうか、黒沢だとどうか」という中で頂いた春子役の目線でも読んでみて、さらに台本が上がってから全員の役を一通り演じます。この作品は魅力的なキャラクターが多いので、誰をやってみても楽しかったです!役者をやっていて良かったと思う瞬間ですね(笑)。

❤ 演じていらっしゃる「春子」という女性はどういう方だとお考えですか?

原作との一番大きな違いは、春子の配偶者である一さんが亡くなっているという点で、そのことによって春子は強く縛られていると思います。
春子は柔和に見えてそう簡単に自分を明かす人ではないと思うんですが、それを唯一崩せるのが一さんだったんでしょう。彼の冗談に笑ったり、歩くんをからかったりとか、そういうものは今の春子には得られなくなってしまったもの。演じるときも回想の一さんとのシーンでは「この人といることで自分がすごく自由になる」という感覚で、「朗らかでいい人」というパーツだけにならないように気をつけています。
春子はどこか浮世離れしていて、イメージとして地球で皆があれこれやっているのに春子は月にいる人、みたいにどこか次元の違うところで生きている人だと思うんです。愛する人を失ってしまったという、どこにも持って行きようのない気持ちを大事にしているんでしょう。皆が現世で恋愛をしているとしたら春子はもう一さんに出会って、ある意味で恋愛の楽しいことはしつくしています。もし「恋愛」というスタンプラリーがあったら、すでに一周しているので、達観しているというかミチコや晶とは違う視点でいる女性、という感じがします。それが幸か不幸かはわからないし2枚目のスタンプラリーがあるのかも知れないけれど、「今はこれでいい」と満足している気がします。

❤ 黒沢に対する春子さんの気持ちとはどんなものなのでしょうか。

春子にとって歩くんというのはある意味、一さんの「形見」なんです。例えば彼が大切にしていた手帳とかがあったら、それを大切にするように、それがたまたま「弟」という生身の存在だったから、そこに甘えているんだと思います。黒沢もきっとそれを分かっているけれど自分にとっても接する機会になるからと、お互いに分かっていながらも支えあっていると思うので、そういうところがミチコから見たら親密に見えるんでしょうね。

❤ ミチコは黒沢と春子をどうにかしようとしていますが…

晶の「貢ぎグセのある人はそんなふうに考えられるんだ、強いね」というミチコへのセリフが印象的でしたが、無償の愛を越えてしまった愛なのかな、という感じがします。恋愛ドラマにありがちな回り道のようにも見えるんですが、ふつうならそれを「本当は好きなくせに無理してるなぁ」というところをミチコは本気で思っているので面白いです(笑)。
元々ミチコというキャラクターはすごく生き生きとしていて生命力があります。それを深田さんが演じることによって密度が高くなっているので、普通のラブコメだと誰かの介入や押し出しがないと主人公は前に進めないのに、ミチコは放っておいても行けそうな気がします。その邁進力を見て元気になる、というのがこの作品の魅力だと思いますね。

❤ 黒沢さんとのシーンが多かったですが、やっとミチコとのシーンも増えてきました。深田さん、ディーンさんの印象はいかがですか?

深田さんとはこれまで同じ作品に出ていてもあまり絡みがなく。セリフのやりとりをしたのはこれがほぼ初めてなんです!原作のミチコのかわいらしさが本当によく出ていて、目の前にいると「なんだかこの子に良くしてあげたい!」とたくさんの登場人物に手を差し出されるのがよくわかります。
ディーンさんは相手の空気によって雰囲気を変えるようなお芝居をなさるので、春子と一緒に居るときの黒沢、ミチコと居るときの黒沢が全然違うので、そういう作戦なのかな、と思っています。
黒沢がクスッと笑う裏にはディーンさんの持つ明るさがあって、余計引き立ちますよね。春子は“月の人”なのであまり感知していないわけですが、笑顔を独り占めしていて、ご覧になっている方から「春子めー!」と思われているかもしれませんね(笑)。

❤ それは晶にもっとも表れていると思いますが…

当然、春子と晶には面識があるはずですが、晶は春子の前では「私は黒沢くんのいい彼女なのよ」というのを頑張って演出していたと思います。春子はそれを気づいていても何も言わない人なので、それがまた晶の癪に障るんだと思うとちょっと面白いですよね。
晶というキャラクターは該当年齢の女性の本音に一番近いんじゃないかと女性スタッフにも好評なので、共感を得やすいと思います。私も全員の役をやってみた中で、晶ちゃんが一番楽しかったです(笑)。原作にはないような春子との接触も期待しています!

❤ ドラマをご覧の皆さまにメッセージをお願いします。

原作の持っているキュンとするところやいい意味の少女マンガらしいところをうまく使いながらも、ドラマを見てくださる方が生身の人間の体感として受け取っていただけるように、現場でも試行錯誤しています。それがクライマックスでどう結実するのか、転んでもすりむいても自分の力で頑張るミチコを、運動会でビリの子を応援するお母さんやクラスメートのように「ミチコ頑張れ!」という思いで楽しんでいただければと思います。