TBSテレビ:日曜劇場『仰げば尊し』

インタビュー

イメージ
vol1

村上虹郎さん青島裕人役

この役のお話や初めて台本を読んだときに感じたことというと?

まず、僕は公立の学校へ通っていなかったので、自分の人生経験において「仰げば尊し」という曲を知らず、「これなんですか?」と質問してしまいました。そうしたら、卒業式などで歌われる曲だよと教えてくれて、「へぇ、そうなんだ」と思いました。台本を読んだ最初の印象は、普通に不良モノだという感じでした。今まで無口な役とか、純朴で素朴でピュアに恋をしているような役が多かったので、不良がテーマなら暴れられるかなとも思いました。
親に対しての反抗期はありましたが、わかりやすい姿格好、見た目から入った不良集団は経験がなかったので、わかりやすい不良の役もいいなと思ったんです。でも、いざ撮影現場へ入ってお芝居をする中で、役や作品に対しての印象が徐々に変わってきました。
この作品は、わかりやすく“不良がかっこいい”ということではないんです。青島の不良チームを見ても、金髪やリーゼント、パンチパーマもいますが、僕が演じる青島は割りとですし、こいつら本当にワルなのかといわれると、僕からすると疑問ですが、この作品の本当のテーマというのは、仲間を想う友情や絆なんだということが、撮影をする中で実に染みてわかってきました。

イメージ

今回演じる青島はどういう人物でしょうか?

青島って、不良に憧れて不良になったわけではなくて、いろんなことが積み重なって、そうなってしまったと思っていて、一見すると強くて怖くて、メンバーの中でいちばん非情に見える瞬間もありますが、実はそうではないと思います。メンバー5人とも何に対しても素直になれない瞬間がたくさんあって、でも青島は仲間のことが単純に好きで、そんな中、周りからも一目置かれている。一緒にバンドをやっていたときも、人一倍、音楽を愛しているのが青島で、陣内とのケンカでケガをして以来、ギターを弾くのを辞めてしまったというところで、周りが気遣ってくれています。
僕個人的に、リーゼントや金髪もいいなって思いながら芝居をしていますが、もしかすると青島にもそういった想いはあるのかなと考えています。でも、いいなと思っていても、そこにジェラシーなどはなくて、ちょっと不思議な役かもしれません。

主演を務める寺尾聰さんの印象というと?

撮影の合間などで、本当にいろんな話をしてくれます。黒澤明監督の現場の話から、麻雀の話、カッコいいタバコの持ち方、お芝居をする上での態度についてなど、いろんなお話を細かいところまで惜しみなく話してくれるので、全部吸収してやるぞと、食らいつくような気持ちで聞かせてもらっています。
(クランクイン前の)本読みから思っていましたが、あれだけの方がお芝居をすると、それこそ“生き様”を感じるというか、生き様でお芝居されたらたまりませんよね。そんな寺尾さんに「お前らには負けないぞ、競争だ!」と言われると、全力でいきますと答えるしかありませんが、そんな風に言ってもらえるのはすごく嬉しいです。自分にできることを全力でやるしかないと思っています。

イメージ

ご自身にも反抗期はありましたか?

僕は俳優の仕事を始めてまだ2、3年なんですけど、デビュー当時の取材からずっと言っているのが、今も昔も、親に対して素直になれない部分が多くて、生まれてこのかたずっと反抗期だと思っている自分がいます。僕、身内に対しての尊敬や感謝の気持ちを表現するのがすごく下手で、それが裏目に出てしまい、その結果、つい反発してしまう。性格の中で弱い部分もあったので、そこを隠すためにも強がっていて、学校では、女性の先生に反抗することも多かったのですが、今思うとダサいなと思います。

その後に転機があったそうですが…

高校1年のときに海外へ留学したんです。音楽をやろうと思って留学したのだけど、正直、特に強い情熱があったわけではなくて、日本にいてもつまらないなと思ったというか、結果的に言うと海外へ逃げたわけです。
でも、海外へ行ったからといっても、めちゃくちゃ楽しいわけではなく、これは日本にいようが海外にいようが、自分がつまらないと思っている限り、どこへ行ってもおもしろくはならないと、どこかで気が付いたんです。そんなとき、日本へ遊びに帰ってきて、日本って楽しいと思えた。それは、日本から離れたことで、良い部分も悪い部分も見えたから、自然に起きたことだと思いますが、それ以来、何か楽しいと思えた瞬間から感謝はするようにしています。それでも感謝を伝えることはまだまだ下手ですが、人の目を見て話をすることが、無意識に出来るようになりました。

イメージ

ご自身にとって恩師と呼べる人というと?

思えばたくさんいます。僕は甘えがちな人なので、両親にはめちゃくちゃ頼っていましたし、あと祖母ですね、おばあちゃん子なので。それと、僕のデビュー作の監督、河瀨直美さんという方がいらっしゃるんですけど、デビュー当時のいろいろなトラブルにも全部つきあってくれて、もうひとりの母という感じです。
撮影現場へ入る前、映画をやるかやらないか悩んでいた時に、「あんたの人生やで」と河瀨 さんに言われたんです。今生きているのはあなたの人生なんだから、あなたが決めなさいと。親や周囲の期待もあるし、学校へも行かなきゃいけないし、そこには責任が伴うものだけど、でも“一歩を踏み出す”ことをやめないでくださいと言われました。

音楽が持つ力についてどう考えていますか?

最高だと思います。音楽は自分がやりたいこと、言ってしまえばその人のエゴとも取れるところがありますが、それを聴いて共鳴してくれる人たちがいて、ときには作者の想像を超えて人の気持ちを動かすパワーを持っている。僕も少しギターを弾きますが、普段生きていて「なんだかなぁ…」ということの方が多い中、文化祭でライブをしたとき、その瞬間は本当に楽しかったです。音楽をやっている瞬間は自分でもキラキラしているんじゃないかと感じられて、そこは音楽が不思議に思えるところです。
ドラマの中で“音楽は心”というセリフがありますけど、至極当たり前のことだと思っています。歌も楽器も技術的に上手い人は、もちろん上手いと思いますけど、そこに気持ちが入っていないと良い歌、良い演奏だとは思わない。気持ちが入っている上で、技術的にも上手いことが当たり前のように素晴らしいことですよね。

イメージ

このドラマのどんなところを観てほしいですか?

僕はたまたま身近に音楽がありましたが、そうではない人もたくさんいると思う。このドラマを通して、音楽を身近に感じていなかった人たちに“音楽は心”ということに触れてくれるだけでも、嬉しいです。

バックナンバー

PAGE TOP