あなたには帰る家がある

インタビュー

茄子田太郎役 ユースケ・サンタマリアさん

ストーリーについて

2組の夫婦がメインのお話です。出会うはずがなかった2組の夫婦が、ひょんなことから出会ってそこから大事になっていく…大まかなストーリーは皆さんご存知と思いますが、僕はこのドラマはコメディだと思っています。かと言って、実際にコメディだと思ってお芝居しているわけではないですが、僕らが真面目に演じれば演じるほど滑稽で、観たら笑っちゃうだろうなというシーンのオンパレード。
浮気や不倫のドラマは、昔からある題材ではありますが、また再び話題になっているじゃないですか。今の年齢になったからこそ、この役が出来る。もっと若かったら出来ない役だったので、楽しく演じています。

今までにない高圧的な役ですが…

怖い役は今までも多かったのですが、今回の茄子田太郎は、怖いとは少し違って、相手をとにかくマウンティングしようと高圧的。嫌われるのはもちろんのこと、相手によっては「何だお前!」と、ぶん殴られてしまうでしょうね(笑)。彼は簡単に言うと、客という立場になった瞬間に態度がでかくなったりする男で、最初にこの作品の企画書をいただいたとき、企画書にそれぞれのキャラクターの説明が書いてあって、茄子田太郎のところに「男の嫌なところを集結させたような人間」と書いてあり、これは酷いなと思いました(笑)。でも、そこまで言われる役を演じたことがなかったですし、面白そうだなとやる気が出ました。さらに、台本を実際に読んだら、本当にそういう奴だったんですよ。茄子田の言うことなすことムカつく(笑)。けれど、そんな奴でも「でも…」と思わせるようなチャーミングさ、「こいつすごい嫌な奴だけど愛さずにはいられない部分があるな」というエッセンスを入れたいなと思いました。人間は多面的ですよね。ものすごく善い人の一日を隠しカメラで撮ってみたら、規則正しく善い事ばかりしていることはないと思うんです。人間は善い人悪い人とかではなく「この人、こういう面があったんだ」という多面性を持っていると思います。嫌な人にも善いところはある。僕が今すごく彼に惹かれるのはそういうところです。悪そうな奴が出てきて“勧善懲悪”というストーリーは、観る分には楽しいし、良いけれど、人間ドラマをやるなら、観ているうちに、知っていくうちに、それぞれのキャラクターの印象が変わっていくようなお話が僕は好きです。だからこの作品はすごく面白いですよ。
とりあえず前半の僕は好感度がだだ下がりすると思います(笑)。けれど、面白いもので、アンチがすごくいる人は、中には「いやいやみんなそう言うけど私は俺は好きだな」と言ってくれるコアな人もいるんです。だから今回はそれでいいと思って演じています。

妻のホンネと夫のヒミツというテーマがあって妻のホンネをおっしゃっているのが真弓さん、夫のホンネをおっしゃっているのが太郎さん…?

茄子田は「正気か!?」ということを普通に本気で言う男。けれど、実はどの男も心の奥底ではそう思っていることです。それを言うと大変なことになると分かっているから、みんな言わない。けど太郎は言う…というだけ。彼は嫌われていることに気づいていないだろうし、嫌われるということを恐れない。そこにあまり頓着せず、自分の家族さえ上手くいっていれば良いっていう男なんです。これはドラマというファンタジーだから、すごく盛って、僕は分かりやすく嫌なキャラクターになっているけど、でもみんな実は心の奥底で同じことを思っているんじゃないかな。常識があるから言わないだけで、太郎はその常識が欠落しているから。ここまで言ってしまうキャラクターは、あまりいないだろうなあ…。ひとつ言えることは、僕が演じている茄子田太郎という男は、どんなことも本当に彼自身がそう思っているから言っているんですよ。

今後のドラマの中で太郎の過去は描かれていくのか…

描かれて欲しいです。でも「そこにあまり真意はないんですよね」っていうのも人間らしいじゃないですか。だから“起承転結つけて”とは思わないです。“あまり意味もなくそういう人間だ”、でも僕は構わないと思う。でも、どうやらあるみたいですよ。太郎にも奥底にしまっている秘密が。今は序盤の撮影中ですが、最初はまず主人公の1組の夫婦、(中谷)美紀ちゃんと玉木(宏)くんの夫婦を重点的に描いていきます。そこにポイントで僕ら茄子田夫婦が描かれていくのですが、僕ら夫婦は最初から謎の夫婦で、謎の家族構成で、家族の態度も変だし、確実に裏に何かあるなと思わせる家族です。なぜそういうことになっているのかというのが、これから描かれていくと思います。1本の映画じゃなく、全話使って描くので、徐々に謎が分かっていく…連続ドラマの醍醐味ですよね。

妻・綾子という人物について

綾子は綾子で変わっていると思います。あそこまで従順で、未だに旦那に対して敬語を使っている。あんまりいないですよね。要はすごく変わっているんです。真弓は、ハツラツとしたエネルギッシュな女性で、その対比として綾子がいる。太郎もおかしいですけど綾子もおかしいですよ(笑)。そういう2人だから今まで一緒にいられたし、傍から見たら変な家族かもしれないけれど、変は変なりに平和にやっていた。そして、佐藤家に出会うことで、お互いの家族の歯車が狂っていってしまうんです。だからといって陰湿な話になるのかと言ったらそうではなく、冒頭でも言ったけれどコメディなんですよ。ブラックコメディなんです。そこを楽しんで観ていただけたら、個人的に嬉しいです。“大人のドラマ”と謳っていますが、笑える瞬間もたくさんありますよ。
人間は滑稽なものだから、善いことばかり言って感動したとか、僕はもういいかな。“人ってやっぱりこんな感じだよな”というのをやりたいです。例えドラマというファンタジーだとしても。いろんな意味で今の自分がやりたいことにピタッとハマった作品でした。

真弓について

好きですよ、真弓ちゃん。見ていて可愛いですよね、右往左往する様が。
茄子田家は動かない家族で、喋り方もモッタリしている。でも佐藤家、特に真弓ちゃんは喜怒哀楽がハッキリしていて表情はクルクル変わる。この作品は、両家族のバランスが良いですよね。佐藤家がエネルギッシュでアクティブにチャカチャカやっているのに対して、茄子田家はズシンとして動かない。まるで違う家族像。
真弓ちゃんみたいな人、僕個人としても好きです。太郎も多分好きだと思います。人間として気に入っているから、絡もうとするんでしょうね。太郎は、2話の真弓が酔っ払ったスナックで「こいつ面白いな」と思ったのではないかな。「この子、こんなストレス溜まってるんだ」というところに、意地悪な興味を抱いたんでしょう。そのうちに色んなことが発覚して、最初は秀明と真弓が夫婦ということを知らずに両方と知り合いになるけど、夫婦だということを知ったとき、さらに面白がって…意地悪な男ですよね(笑)。それがまた良かれと思ってやっているのがすごいんですよ。“こいつらをとんでもない目に合わせてやろう”じゃないんです。“一肌脱いで助言してやろう”と本気で思っているんですよね。本人以外はただの迷惑でしかない(笑)。

秀明との関係

またね太郎は嫌いではないと思います。すごくマウンティングしやすい男。
だから太郎は秀明を気に入っているんでしょうね。「おい佐藤!俺は客だぞ」と(笑)。言っていることもひどいし、秀明はよく我慢して太郎に付いているなと思いますよ。僕だったらぶん殴ってるよ!でも、太郎からすれば気に入っていて、楽しんでいるんです。本当に「俺が人生の先輩としてお前にいろいろ教えてやるから」と思っているんです。ただ、そうやって近づくほど、どんどん嫌われてく…という。それすら気づかない。幸せですよ。太郎は。全部良かれと思ってやってることが、すごい迷惑かけてるのに、「俺は良いことした!」と思ってる。でもそういう人いますよね…。

今後の佐藤家と茄子田家どうなったら良いか

みなさんの予想を超えるような「どうなるか分からない!最後こうなるの?!なんかモヤモヤするなあ〜」と思ってもらえたらいいなと思います。
「スカッと終わりました!見事!」のようなドラマは少なくないですし、それと同じことをやっても仕方ないじゃないですか。変化球を投げないと…と思うので、それなりのラストになると思っています。“明確な答えを出さなきゃいけない”とは思わないです。グレーも嫌いではない。人生で起こりうる出来事の大なり小なり、答えが出ないことだらけだと思います。ドラマはスタートして、最終回で終わるけど、その後は観ている人たちは、その夫婦たちに何が起こるかわからない。だから白黒はつけなくてもいいんじゃないかな。とにかく展開がスピーディーなドラマなので「もやもやするラストが好き」と思ってもらえると良いなと思って演じています。

夫婦とは?

所詮他人である。血が繋がっていないんだから。でも家族にならなきゃいけないでしょ。
何かの瞬間に「僕の姉でも妹でもないし、いとこでもないし」と思うことはあります。つまり他人と一緒にずっと生活をしていくってことですよね。でも、結婚はそういうことだと思うんです。結婚したら他人なのに家族が増える。妻のお父さんお母さんがいるし、義理の兄弟も。他人だけど。
最近は離婚も多いし、だからどうなるか分からないものなんですよ結婚は。結婚式の時に「未来永劫〜」と誓いを言いますけど、「わからないじゃないか!」と思います。盛大な結婚式を挙げて、しばらくしてドロドロで別れるなんてこともある。
夫婦とは…同士とか親友とか、そう思う事もあるけど、辛辣なこと言うつもりはなく、みんな同じような事思うだろうから、違う事言おうと思うけど、結局“他人なのにウマが合う”ということ。それで愛することが出来て、ずっと一緒にいられる人を探すのはやはり大変なことですよね。

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